博士になった象鉛筆の戯言

北関東に生息する博士研究員の独り言をご覧あれ。

現役の博士学生が国際研究機関でのインターンシップに応募した話

こんばんは!

Dr. SSLです!

 

実は私、この記事を含めここ数回の記事は通勤中にほとんど書いています。

 

フランスにある国際研究機関でのインターンが始まってからは、

アパート最寄りのバス停からインターン先までシャトルバスに乗って移動をするため、片道1時間、往復で2時間くらいは自由時間が取れるからです!

(本当は読書をしたいのですが、日の出前に出勤ということもあり、バスの中が暗いので...笑)

 

さて、私が最近ちょくちょく言及しているインターンですが、折角国際研究機関で働くというレアな機会を得たというのに、全く本件についてはブログで触れていませんでした。

 

そこで前置きが長くなりましたが、

国際研究機関でのインターンに応募して、

採用されるまでの話について書こうと思います。

 

今回の記事は、海外インターンに行くためにはどのようにすれば良いか等と行ったようなハウツー記事ではなく、自身の経験の記録用として作成したものです。

 

以下が本記事の目次です。

 

 

1. インターン先について

私がインターン先として選択した場所は、国際熱核融合実験炉、通称ITER(International Thermonuclear Experimental Reactor)の建設プロジェクトを進行するITER機構という所です。

www.iter.org

核融合というものに関しては、メディアにとりあげられることもそれほど多くはないため、馴染みの無い方が大多数だと思います。

以下に核融合反応の説明、核融合炉の仕組みについて分かりやすく解説されたサイトのリンクを添付します。

www.nifs.ac.jp

 

物理的な仕組みについては省略いたしますが、核融合発電は、早く言えば「海水(に含まれる物質)からクリーンなエネルギーを生み出す」という未来の発電方法です。核融合発電が実用化された暁には、我々が10億年くらいはエネルギーで困ることは無いと言われています。

 

さて、そんな核融合反応を利用して発電を行うための機器、すなわち核融合炉についてですが、実は現在、複数の国が協力して商用化までの第一歩となる核融合実験炉をフランスのSaint-Paul-lès-Duranceという場所に建設するという大規模なプロジェクトが進行しています。それがITERプロジェクト」であり、そのプロジェクトの管理機関がITER機構です。

ITER機構の施設自体も建設場所と同じ場所に位置しています。

 

ITER機構は7極と呼ばれる国々(アメリカ、ロシア、中国、EU、韓国、インド、日本)のサポートで成立しております。ちなみに、日本の現地職員は全体として非常に少ないものの、その他日本の大手企業や有名な学術、研究機関のエンジニアや研究者、ビジネスアナリストの方など、多くの日本人がこのプロジェクトに貢献してきました

 

ITERプロジェクトの進行具合についてですが、現在のスケジュールでは2025年に初実験を行うと言われています。

ITERプロジェクトと同時に各国で発電の実証、商用化に向けた核融合炉のデザインも進められており、それらの確定のためにも、ITERを使用した実験データが必要不可欠であるため、ITERプロジェクトは非常に重要な役目を担っています。

2. インターン先を決定した動機

インターン先について紹介させていただきましたが、私は一体何故そこに応募しようと思ったのか?

 

理由は3つありました。

 

1つめは、研究機関で働くってどういうことかを知りたかったからです。

研究者としてどこかに雇ってもらう場合、選択肢としては主に、大学の教員になるか、企業の研究員になるか、研究機関の職員になるか、となると思われます。

この内、前2つは普段から先生を見ていたり、企業へ旅立った多くのOBの話を聞いたりすると、なんとなく様子がわかります。

ただ、研究機関で働くということに関しては自分の中では謎に包まれていました。研究者という道を選ぶかはまだ不明ですが(自分は研究者には向いていないのでは?と思うため)、その道を選ぶ上での択肢がどんなものかをはっきりさせておこうというのが第一の動機なわけです。

 

2つ目は、単純に多文化多国籍が混在する空間で働くことに憧れがあったからです。

これは割と皆さん思っていることかもしれませんが、国内だけにとどまらず、世界という舞台で働いている人って、格好良く見えますよね?!

私のモチベーション向上の源となるのは、自分がやっていることや自分の立場を省みて、「自分ってこんなことやってるんだ!格好良い!」という自己満足的なものです。

憧れというのは、自分が「こうなりたい」と思えるものであると私は考えていますが、それは私にとって、自分がやっていたら「格好良い!」と思えるもの。その一つが、私にとってたまたま国際色の強い場所で働くことでしたので、一つめの理由と合わせて、国際研究機関をインターン先の候補として考えたのです。

 

そしてラスト3つ目は、何か秘密の研究所っぽくて格好良く見えたからです。

私は結構、陰謀論とかそういうオカルト系の話が昔から大好きで、某秘密結社のオフィシャルなトートバッグを普段使いしていような人間です。そのため、もう何年も「なんかヤバそうな研究をしている」ような場所で働きたいなと思っていました。本当は、地下何階もあって、普段から地球外生命体と「よっ」て呼びあえるような環境で、一度入ったら外の世界に戻ることが許されないような所に行きたいのですが、そんな場所へ行く機会なんかそうそうありません。なので仕方なく、Google mapでモザイクがかかっている研究所」とハードルを下げ、調べて見つけたのがITER機構でした。

核融合というテーマ自体も、私は普段から触れているため何の違和感も感じませんが、世間からするとまだベールに覆われたミステリアスな印象があるようなので、「世間からしたら秘密の研究所」だろうという憶測をもとに、「研究機関で!」「国際的な場で!「秘密っぽい」という三拍子の揃ったこの場所インターン先の候補と致しました。

3. インターンへの応募、そして採用

2018年4月。

インターン先の候補は決まり募集要項を見ると、なんと博士学生向けに募集しているのは1年間で世界で15人だけ!

少なすぎる!笑

 

そして審査は2段階で、まずは書類審査、そして面接というな流れです。

 

自信はともかく応募しなければ採用も不採用もないと思い、直ぐにCV(履歴書みたいなもの)と機構長宛のCover Letterを作成。そしてインターン募集窓口のアドレスへ提出しました。

 

5月中旬。

応募から1ヶ月半くらいが経過し、結果はまだかなまだかなと思っていると、一件のメールが。

タイトルから察するに、インターン応募の結果に関するもののようでした。

恐る恐る内容を見てみると...

 

残念。

今回はダメなようでした

 

が、自分の中では諦めきれない思いがあったので、ITER機構と関係のある国内研究機関の方に、どうすれば応募が通るのかを聞いてみました。

すると、どうやらインターンに選ばれている人の傾向としては、半年から1年位かけて、ITER職員の方と仕事内容について相談しているようでした。

それなら!と思い、自分が配属を希望する部門のdevision headの方の連絡先を伺い、その方に直接インターンを希望する旨を伝えることにしました。こちらからの連絡には案外直ぐに返信をいただけて、「近い内に面談をしたい」とのこと。

この頃から私は周りの人達に「多分ITERインターンに行くから」と公言していました。先走っているようにも見えますが、願望を口に出して辺りに散らすことで、間接的に自分の行動を後押しするので、この方法は私にとって、モチベーションを維持する源となります。

どうにかして目標を達成しないと、ただのビッグマウスに成り下がってしまうというプレッシャーの下で。

 

そして7月初旬。

初めてのインターン先との面談。Skypeを使った電話によるものでした。

面談直前は、「何を聞かれるんだろう?」、「めちゃくちゃ難しい専門用語を使って話してこないかな?」などという不安に襲われました

加えて、国語を使っての電話をするという経験は殆どありません。相手の表情や口の動きから文脈を理解するという方法が使えないという不安にも苛まれました。

ですが、普段からポッドキャスト等で耳を英語にならしていたためか、そもそもの通信障害によるもの以外は、それほど問題はありませんでした。

面談の内容は、軽い自己紹介を行う、インターンを希望した動機やインターン先でやってみたいことを問う、といったもので、冗談が時折飛んでくるような、身構えていったよりも数十倍緩い雰囲気で安心しました。

話を聞くと、私の当部所へのインターンの応募が落とされた理由は、「そもそも事前に直接相談していない人は採っていない」からだそうです。やはり諦めずに、抜け道を探していく方法を選択したのは正しかったのです。「行動すること」の大切さを改めて実感しました。

ファースト面談も無事に終わり、次は、もしインターンに来ることになったら何をするかを具体的に決める、という面談をしたいとのこと。

 

そして7月下旬。

2回目の面談です。向こうの方から提案されたミッションは「ITERの電力システムを模擬するプログラムを作る」というものでした。私は機械系に属していて、電気系の知識には乏しいのですが、その点を考慮していただいた上でのミッションだそうで、実際には制御工学ベースの知識を使用してコードを作るというものでした。正直私は機械系とはいえ、制御理論は好きで自習していた程度であったので不安を感じていましたが、「私は彼らの持っていないものを持っている、これってチャンスじゃないか」と思い、当テーマにしていただきました。

 

そこから何度かSkypeでの面談を通し、気が付けば9月。

 

ITER機構の人事よりメールが来ました。

手当てありのインターンへのオファーです。

期間は1月7日から7月7日までの半年間。

オファーを受け取った当初は、嬉しさはあったものの、具体的な実感は全く湧いておらず、事がすんなり進みすぎて不安さえも感じていました。不安すぎて親しい友人に何度も相談をしたこと記憶しています。

 

インターンの応募をした上で見に染みて学べたことは、「やらなかった後悔よりやった後悔」ということ。これは私が普段何事にも意識する言葉ですが、まさしくその通りであったと。

1度選考で落とされてしまった際に、その場で躊躇して、何もせずに終わってしまったらどうだっただろう。本当に行動に出て良かったと。今でもそう強く思っていますし、自分が今まで通してきた筋を今後も通していける自信にも繋がりました。

 

インターン応募から採用までの流れはこんな感じでした!

4. おわりに

よくあるブログ記事としては、「海外インターンシップに参加することの意義は?」とか「インターン採用のためのテクニック」とか、広く浅く人のために役立つ物が多い気がします。

しかしながら、ネットは自分のやり方を布教させるような、いわば汎用的な記事で溢れている。自分の道筋は必ずしもそうある必要は無く、自分に興味を持っていただいた方に一つの特徴として見ていただければ良い。そんな意図で上述のような記事を敢えて書かず、ブロガーにとっては絶好のエサである「海外インターンシップ」というトピックにもかかわらず、このような「報告」調の記事となりました。

悪く言えば自分語りが激しい記事となってしまいましたが、個性のアピールという解釈もできなくないとご理解頂けると幸いです。

 

ここまで長々とお読みいただきありがとうございました。

 

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