博士になった象鉛筆の戯言

北関東に生息する博士研究員の独り言をご覧あれ。

SF的妄言~人類の使用期限~

こんばんは。

Dr. SSLです。

 

一昨日昨日と続けてインターンについての割と実用的で真面目な記事を書きましたが、

本日はそれらとは全く異なるタイプの話を。

 

私は普段からジャンルを問わず様々なことを考えるのが好きです。

所謂厨二病気と一言で片づけられてしまいそうな「自分がもし魔法を使えたら?」ということから、自身の研究の事、自分の存在について、今から2世代後に来るの世界の事、代用品としての昆虫の利用方法や日本語特有の擬音表現等々。

 

殆どが想像ではなく全く役にも立たない妄想なのですが、

今回はその例を一つご紹介しようと思います。

最初にお断りしますが、冗談だと思って軽く流してください笑。

 

さて本題に入りますが、皆さんは最近の技術の発展についてどのようにお考えですか?この質問では切り口の角度が連続的かつ趣旨が曖昧過ぎるので的を絞ります。

情報科学の発展は人間をさらなる発展へ導くと思いますか?」

 

情報科学の発展の代表例としては数年前から急激に注目を集めている人工知能(AI)関係の技術が有名ですね。AIというものが未だこれほどまでに注目を浴びる前から、シンギュラリティ(技術的特異点)というものの存在について議論はされてきました。最近ではテレビや雑誌などのメディアでも良く取り上げられるのでご存知の方も多いと思います。情報技術の発展により、機械が人間を追い抜いていく日が来るかといった話です。解釈としては色々ありますが、多くの定義は現在は人間が入力を入れなければ出力をしない人工物が、人間の入力と結び付けられない生産を繰り返す日は来るのかといった感じです。

こんなことは本当に起こるのでしょうか?

多くの科学者はこの件について、少なくとも人間とそれが生み出したものの立場が逆転するといったことは原理上考えること自体がナンセンスであると。

 

ここからが私の妄想。

 

そもそも人間と人工物、特に情報技術というものは本当に上下関係のみで語ることができるのでしょうか?

 

私は思いました。それらは上下の立場に合って逆転がどうとか議論するものではなく、連続的な通過点に過ぎないと。

 

宇宙誕生時のエネルギーの放出、分子という枠組みの誕生、星、惑星系の誕生、未だ地球外生命体は発見されていない(?)ですが生命の誕生、さらなる生命同士の複雑な相互作用から生み出される社会、技術の創造...。これらは全て、ある環境条件がそろったとき、Goldilocksの原理に従いそれまでの平衡点が次のさらに系にとって最適な平衡点へと到達するといったことの繰り返しであるという話があります。これは私が修士学生の頃生命科学の講義の一部を担当していた時に、メインの外国人講師の方から教えてもらった話で、大変興味深いものでした。

en.wikipedia.org

ここでいう"最適"というのはこの世界が始まってから終わりがあるというのが前提であるとき、エントロピー的に最適であることです。エントロピーと言う言葉は中々聞きなれない言葉ですが、一般的には「ばらばらさ加減」を表す示量性(系の大きさに比例するかどうか)のパラメータです。この世界はエントロピー、つまり「ばらばらさ加減」が増えていく方向に進んでいる、この法則はエントロピー増大の法則と呼ばれています。

あまりにも直観的すぎる解釈ですが、Goldilocksの原理に従って系の平衡点が移り行くさまは、複雑さが増していく方向であるという事に相当するとも考えられるかもしれません。

 

実はこのエントロピー、物理界隈だけでなく、情報科学のフィールドでもよく使われます。これはエントロピーというものの定義上、それは現在の情報科学を構成する「場合の数」と密接な関係があるからです。元々は統計学と深いかかわりを持つ熱力学で定義された言葉なので、統計理論に基づいた情報理論で同じ言葉が定義でき、使用されるということは自然なことです。

 

実は物理におけるエントロピーと情報におけるエントロピーを同じ土俵で議論することもできて(専門書をご覧下さい)、それらは少なくとも我々が生きる実社会では交換可能なものだと思われます。

 

さてここまで考えてみた時、情報技術の発展とは何を意味しているのでしょうか?情報を操れるという単純な解釈の見方を少し変えると、より複雑な情報を生活に直接還元することができるという事になります。これだけ聞けば人間社会の発展こそが我々の反映とも聞こえます。が、人間が自らを存在せしめるためにエネルギーを必要とすることも忘れてはいけません。情報技術の発展による我々の生活の複雑化、つまりエントロピーの増大(この世界がGoldilocksの原理に従う系の単位による集合と考えた場合)が実現される。エントロピーが増大するということは、我々が自由に、秩序正しく使えるエネルギー減少しているとも見ることができます。これは熱力学でいうヘルムホルツの自由エネルギーというものに相当します。こちらの観点から見れば、自由エネルギーは減る方向に世界は向かうということになりますね。

 

実際我々がエネルギーを大切にだとか新エネルギーを作り出そうだそうといったことは、如何にして自由エネルギーにアクセスできるかを頑張っているという話なんですね。先ほどの話を考えてみると、この点は自然を守るという看板の元に行われる努力にも拘らず、もっと根底にある自然に逆らう動きとも見えます。実はこの点自体も自然法則に従っているとも考えることができて、それはまるでIHヒーターに見る電磁誘導のようで、現在の平衡点に戻そうとする力が働いているとも。

 

そう考えてみると、前にGoldilocksの原理に従って系の平衡点が動くと述べましたが、我々の努力は実は平衡点の移動の兆しを示しているのかもしれません。我々は知らず知らずのうちに人間、生命基準で過去も未来も考えてしまいがちですが、実はそれらは系の平衡点の軌跡上にある一点一点に過ぎない。世界が秩序を嫌う方向に進むという法則に従っている以上、生活が情報に帰結され始めるということは当然であり、そういう意味では人工物、例えば人工知能を持つロボットが人間の次のステージに来るということもある意味自然の流れで、それは上下だとかそういった立場上の問題ではなく、点から点への移動として考えるべきなのかもしれません。例えば、今の人間は人工知能の開発を通して実世界をより概念的なものに変えていくためのツールとして存在しているのでは?となると、科学技術、情報技術の発展の先に人間を待つのは役割の終了...。

 

さてどうなるのでしょうか?

 

上手く説明ができているかは分かりませんが、以前にお話ししたアナロジーを乱用することにより、こんな感じで終末説ができあがります。結構この考えは好きで、科学技術を発展させる立場にある私は、このような妄想を膨らませて、自分のやっていることは終わりを待つ人類の、自然法則に従う自然への抗いの一部だと常に考えながら研究をしております。科学者としてはあるまじき考えであるとは思いますが。

 

全ては好奇心から。

 

それではまた。